統合失調症は病識に欠けるとよく言われます。
自分が病気であるという自覚が持てないということです。
でもそもそも人は、自分に降りかかる試練が深刻であるほど受け止めることは難しいです。
母親の立場で、慣れてきたとは言っても、我が子が統合失調症であると認めることは今も難しいです。
不合理な妄想や幻覚でも本人には現実
妄想や幻聴幻覚は統合失調症の典型的な症状です。
息子に幻聴があったのかは聞いたことがありません。
でも、空笑という症状があったことから、私達が現実には理解しがたい何かが息子には認識できていたのでしょう。
妄想があることは、話していてよくわかりました。
非現実な夢を語っているとかそんなことではなく、本人はそれが現実にあるかのように語るのです。
壮大な嘘をついているとでも言うのでしょうか。
知らない人が聞けば、本当かと思って聞いたのになんて大嘘つきなのだと怒るかもしれません。
それが人間関係を壊す原因にもなるのですが、本人には決して嘘ではなく現実なのです。
脳の病気であるために脳が病気を認識できない
私達は体の病気にかかった時、それに伴う症状が現れれば「何か異常がある」「病気かもしれない」と自覚することができます。
それが病識であり、だからこそ治療の必要性を理解することもできるし、病院に行くこともできます。
でも精神病の中で特に統合失調症はその自覚を持ちにくいと言われています。
自分が病気であり治療が必要であるという認識ができにくいのです。
幻聴や幻覚も、奇妙な言動も、周りから見れば明らかに異常でも本人には現実の世界ですから、治療が必要だと思えないのは当然かもしれません。
本人にとっては、おかしいのは自分ではなく、監視している(と感じている)誰かであったり、盗聴器をしかける(そうされると思い込んでいる)組織であったり、個人的に暗号を伝えてくる(のように見える)何かであり、自分ではないのです。
それに、どこかが以前と違う、変だと薄々不安を感じていても、自分から精神科の治療に結びつくことはないでしょう。
統合失調症と知ったから病識が持てるわけではない
私の息子は、閉鎖病棟への初めての入院の時、統合失調症という病名告知を受けました。
息子の病名を告げられたのは母親の私です。
そして息子には私から何となく教えたと記憶しています。
私もどうしたらいいかわからず茫然となっていたので、まして息子には何のことかもわからなかったかもしれません。
統合失調症であると知ったからと言って、息子には何ら変わることはないのです。
例えば、眠れないという悩みがあれば、睡眠薬で眠れれば楽になるでしょう。
でも息子には悩みもなければ、痛くも痒くもなく、困ってないのです。
病識がなければ治療は進まない
何も困ってない以上、自分から治療を必要ともしません。
だから医療機関に繋ぐこと、治療継続させることはとても難しいです。
統合失調症の家族の立場の方にはわかるのではないでしょうか。
「周囲であれこれ言う方が異常だ。自分は病気ではない。お前たちが精神病の治療を受けろ。」と、私の息子はよく言いました。
私も確かに精神状態が不安定でした。
家族も患者にどう対応したらよいのかがわからず、混乱しているのです。
そして、とかく家族は閉鎖的になりがちです。
本人は治療に抵抗し、この状況を誰にも相談できず、将来への絶望しか思い浮かびませんでした。
まとめ
自分が困らない以上、病気という自覚=病識が持てないのは当たり前のことかもしれません。
異常だとか感じるのは周囲であって、本人に自覚はないし修正もできないのです。
それが統合失調症の難しさだと思います。
はっきり言ってこの病気が、ちょっと変わった人になるくらいですむのならそれでもよいかもしれませんが、そんな簡単な話ではないのです。
病院と縁が切れてしまえば繋げるきっかけが二度とつかめない気がして、それだけは何とか繋いでいました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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