私の息子はいかにも統合失調症というような急性症状から始まったのではなく、診断名がついたのもずいぶん経ってからです。
でもこれはただの不登校ではない、統合失調症があるのではないかと疑う症状はいくつかありました。
その一つに空笑があります。
普段は目立ちませんでしたが、意味もなく笑う顏を確認した時にこの子には病気があると私は確信したのです。
空笑は幻覚妄想に支配されて起こる症状
空笑は字のごとく空笑いのことで、見た目は思い出し笑いのようにニヤニヤと笑う状態です。
でもその笑いは周囲の状況に全くそぐわないので違和感があります。
本人にはおそらく笑う理由があり、その根底には幻覚妄想があると考えられます。
【幻覚・妄想】
幻覚と妄想は、統合失調症の代表的な症状です。幻覚や妄想は統合失調症だけでなく、ほかのいろいろな精神疾患でも認められますが、統合失調症の幻覚や妄想には一定の特徴があります。幻覚と妄想をまとめて「陽性症状」と呼ぶことがあります。
周りの人からは、幻聴に聞きいってニヤニヤ笑ったり(空笑)、幻聴との対話でブツブツ言ったりする(独語)と見えるため奇妙だと思われ、その苦しさを理解してもらいにくいことがあります。
出典元 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html
上記の通りに幻覚妄想は統合失調症にありふれた症状であり、空笑も幻覚妄想があることを意味していると言えます。
見てはならないものを見たようなショックと不安
それまで息子には、幻覚妄想に左右されているような明らかな症状は見当たりませんでした。
奇妙なノートを綴っていたものの、私もそれだけで精神病であるとは認めたくない気持ちがありました。
急に攻撃的に家族の責任を問い始めるのも、滅茶苦茶な暴言や要求の数々も、イライラして物を壊す行為も、ただ感情の自制が効かないだけと思いたかったのです。
どこから出てきたのかと思うような妄想思考も「こうありたい」という理想が空想となって出てくる、根拠のあるものと思いたかったのです。
支離滅裂なわけではないし、意識もちゃんとあるし、ほとんど話さないけど意思の疎通はできていたのです。
私がそれを見たのは、二人で高校の説明会に行った時です。
説明会で隣に座っていた息子は、なぜか必死で笑いをこらえ時々肩が震えているのがとても奇妙でした。
ニヤニヤして吹き出したりするので、何がおかしいのかを尋ねてみました。
すると息子は斜め前の席を指さし、理由は言わずにまた吹き出すのです。
斜め前には何の特徴もない人の背中がありました。
結局、その人のことなどどうでもよいのでしょう。
それは全くその場にはそぐわない空笑であり、私には理解できない笑いの理由が彼の中に発生していたと思います。
私はその空笑に対して、見てはいけないものを見たような気がして背筋が凍るような思いになりました。
統合失調症の進行の不安
ひきこもっていて中学の卒業式も出席できなかったのに、それ以降は同行で少し外出ができるようになっていました。
高校生になるので服が欲しいと言い、一緒に服を買いに行ったりもしました。
ひきこもりだったので服など不要な状態でしたが、おしゃれに関心が向いてきたのかと思って喜んで連れ出したのです。
相変わらず過敏で気を遣うけど、それまでの無表情が少し明るくなったように見えて、このままいい方向に立ち直ってくれるのではないかと思いました。
でも明るくなったように見えていたのは、ピリピリした硬い表情がニヤニヤした表情に変わってきたのをそのように解釈しただけで、統合失調症の典型的な症状が現れ始めていたのでしょう。
空笑があるということは、幻覚妄想があるということに結びつきます。
幻聴があるような様子には見えなかったけれど、実はそういう症状が以前からあり、それがあのノートに書かれた文章なのかもしれないなどと考えました。
そしてこれはやはり統合失調症に違いないと思い、この先の闇は深いような予感がして絶望的な気持ちになりました。
まとめ
空笑はあまり聞かないかもしれませんが、幻覚妄想に支配されて起こる症状の一つです。
病気でなくても思い出し笑いくらいすることはありますけど、それとは違う何となく変な雰囲気です。
そして気持ちが悪かったというのが私の本音です。
それまでは前兆であり、統合失調症の陽性症状と呼ばれるものが次第に明確になっていっていたのでしょう。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
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