統合失調症を発症してから、息子は自分が小学校の頃からいじめに遭っていたという話をするようになりました。
でもその話のどこまでが本当のことだったかはわかりません。
息子は私達家族のこともいつも思い出したように責め、その内容は次第にエスカレートして妄想的、非現実的になっていく傾向がありました。
しかし、統合失調症で入退院を経験し、その後本人が必死で築いたであろう友人関係の中で、彼は集団いじめに遭い暴力も受けたのです。
いじめに遭った過去を語り始める
統合失調症という病名が付いて入院した時に、息子は主治医に「自分は中学の時、いじめに遭った」という話をしたようです。
中学はほとんど不登校でしたが、いじめに遭って学校に行けなくなったということは聞いたことがありません。
スクールカウンセラーには話したのかもしれませんが、いじめというのは初耳でした。
小学校の時からいじめられ、みんなの前で服を脱がされるなどの目に遭ったこともあると言うのです。
相手が誰かなどの具体的な話は出てきませんでした。
内容が定かではなく、今更事実なのか確かめようがありません。
服が汚れて帰ってくるとか物がなくなるとかは聞いたことがなく、そのようなひどいことが起こっているように見えませんでした。
小学校の時には、仲良くできる友人関係もあったはずでした。
この話が被害妄想ということもあるかもしれません。
でも、もし本当に起きていたのであれば、私達も周囲も誰一人気づかなかったということになります。
明らかないじめではなくても、内向的な本人にとっては辛いと感じる人間関係があったのかもしれません。
発病後の友人関係
初めての精神科閉鎖病棟への入院は、息子との約束通りに1ヶ月で退院になりました。
1ヶ月で見違えるようによくなったわけではありません。
この入院は、本人にとって、今の時点で副作用が現れることなく、続けていきやすいと思われる薬の調整がとりあえずできたというだけにすぎません。
でも統合失調症の治療は長期の内服になるので、薬の選択は重要なのです。
退院してまた自由になった息子は、入院前と同じようにまた出歩き始めます。
じっとしていられずに足踏みしているというような、そわそわした行動はなくなりましたが、相変わらずあちこちに電話をかけては出かけました。
この時、本来ならば息子は高校生であり、その年齢の子には不自然ではない行動であったとしても、私にはどうしても全てが病的に見えてしまいます。
そして、同居である私の母は全てに楽観的で、それが尚更、私が気を揉む理由の一つでした。
息子には、どのように知り合ったのか、同い年の数人のグループの遊び友達ができたようでした。
不登校で世間知らずの小学生のような息子には明らかに不釣り合いなタイプのいわゆる不良グループという感じで、それが私の不安を誘いました。
高校に行けずどこにも所属のない息子には、普段通学しているような同級生は皆忙しく、相手にしてくれる人が他にいなかったのかもしれません。
嘘つきと呼ばれて
友達がいなかった彼にとって、属することができる友人関係を持ったのは新鮮だったでしょう。
その中の一人の家にいつも集まるか、カラオケボックスなどに遊びに行っているようでした。
とにかく小銭さえやっていれば遊びに行ってくれるので楽でいいし、帰って来なくてもいいと母は言い、私には、舞い上がり背伸びしているようなその行動が心配でした。
でも、初めて自分で築いた人間関係を尊重すべきなのかと考えてみたり、私の中では葛藤でした。
こういう時、普通の親はどうするのか、私の育った家庭環境も普通ではなかったから、私は自分の感覚に自信がありませんでした。
ある日、私の不安は的中しました。
ある夜、息子はその「友人」達にリンチに遭い、怪我をして逃げ帰って来ました。
グループの中で気が合っていたと思われる一人の子が、わざと息子を逃がしたようでした。
息子は「みんなに嘘をついた」という理由で制裁を受けたのです。
嘘の内容はわかりません。
嘘つきと責められ手術が必要なほどの大怪我を負ったので、逃がしてもらえなければ命を落としていたのかもしれません。
私は警察に被害届を出しました。
心に残った傷・対人への恐怖感
この事件で彼は、自分で築いた初めての友人関係を失くしたばかりか、対人への恐怖感を強く植え付けられ、再び引きこもりがちになりました。
彼には、自分が嘘をついた自覚は全くないようでした。
いったいこのようなトラブルに繋がるほどの内容が何だったのかはわかりません。
想像ですが、それは彼が妄想で自分を誇大に語ったのではないかと考えました。
普段から家族にも、IQテストをしたら知能指数が180あったなどとまことしやかに言うことがありました。
ちなみに、IQの平均値は100、70~130までに95%の人が収まり、130を超えると異常値とも言えるほど高いことになるそうです。
同世代の友達関係の中でも、そういう種類の話をしていたのかもしれません。
私達はまた始まったと受け止めることができますが、それは彼が嘘つきというレッテルを張られる原因だったかもしれません。
場当たり的でまとまりのない、統合失調症の妄想の症状だったのではないかと思っています。
まともに聞けば腹が立つかもしれません。
ただ、たとえ嘘つきでもこんな目に遭っていいはずはないのです。
そのグループと関わらせるべきではなかったと後悔し、あまりにも残酷な結末で息子が不憫でした。
まとめ
統合失調症があると、その症状が物事に対する正常な認識を失わせ、人間関係にもいじめの問題は起こりやすいと思います。
うちの場合、引きこもりから脱出したばかりで不相応な冒険をし、降りかかった試練は大きすぎました。
同じ病気であっても、元々の性格はそれぞれ違うので人との関わり方が上手な人もいるでしょう。
いずれも、妄想などの症状がうまくコントロールできているかによると思います。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
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