統合失調症があるから全く社会で働けないということはないと思います。
病気の自覚が持てること、薬でうまく病状をコントロールできていること、ひどい妄想や混乱がないことなど条件はあるでしょうが、働ける人もいるでしょう。
また、職種にもよるかもしれません。
息子も、中学を卒業し高校を中退した後、一時は働こうという気持ちにもなったようでした。
私も期待したのですが、息子はとても働けない様子で、見ていられませんでした。
バイトの面接に合格する
息子の思考の中にも健康な部分は残されていて、時々、回線がつながったように真っ当なことを言うことがありました。
ただぶらぶらしていても暇だから、仕事をすると本人から言い出しました。
それまでいろいろありすぎたので、私の方からは一度も仕事のことや今後のことなど問いかけることはしませんでした。
そんな話をするとまた、自分はIQ170以上あるのに中卒で働かせるのかなどと文句を言い出すのが想像がついたからです。
学校に行けなかったコンプレックス、自分は誰よりも優れているという妄想、自分の理想と現実とのギャップに対する苛立ちが、彼の中で大きく膨れ上がっているのは手に取るようで、家族はビクビクしていました。
そして何かスイッチが入ると、延々と壊れたように同じ文句を繰り返して興奮が止められなくなります。
ところが、自分から仕事の話を始め、すぐに一人でアルバイトの面接に行ったのです。
ファーストフードのバイトなので、基準も厳しくなかったと思いますが、どんな履歴書を持ってどうやってそこに行ったのか、私はさっぱり知りませんでした。
もしかしたら、誰か顔見知りの同級生などがいて、すんなりと入り込むことができたのかもしれません。
バイトに採用になり、本人は嬉しそうでとても張り切っていました。
その辺にいる10代の男の子と何も変わらないように見えて、今度こそ、病気も治るかもしれないなどと、私もありえない希望を一瞬抱いてみたりしました。
教えられていることが理解できない
アルバイトは、交通機関を使って行かなければならないくらいの距離がありました。
時間帯は夕方からのシフトだったようです。
でも、息子は、計画的に起きることや予定に間に合うように準備することがとても難しいのです。
タイムスケジュールが立てられない、配分ができないとでもいうのでしょうか。
それでも、バイトのためだけに朝から起きて一日かけて準備をしていて、それは大変だろうと思うのですが、本人は前向きでした。
仕事の内容は、接客ではなく裏方のようだったし、他にも何人も同世代はいるようだったので、社会に出るきっかけになればと、本人には言わないですが祈るような気持ちでした。
でも、出勤できたのは1週間足らずです。
息子は、しきりに「仕事がわからない」と訴えるのです。
教えてくれることが全然理解できないから覚えられないと一生懸命言うのです。
それはきっと息子には、本当のことだったと思います。
何をどんなに言い聞かせても、理解せず話がかみ合わない息子は、そんなところでもやはり同じなのではないかと思いました。
そして、息子はそのままバイトを辞めました。
数日分のバイト代とバイト先で履いたシューズも、取りにいくことさえ拒否しました。
人前に出ることはできない
せっかく自分から行動して始めたアルバイトでしたが、1週間も経たずにきっぱりと辞めてしまいました。
せめてその短い経験についても、どうだったか聞いてみたかったですが、触れようとしませんでした。
ただ、「仕事が難しかった、あんな教え方でできるわけがない。」ということだけは何かにつけて言います。
それは仕事が続かなかったことの言い訳なのでしょうが、社会的な場所で、人と話や行動がかみ合わないことを本人が一番思い知らされたかもしれません。
その後、しばらく新しい仕事を探そうという行動は見られませんでした。
私も息子が哀れに見えて、ますます何も言えなかったです。
そして、忘れた頃に再び息子は就職に挑戦します。
自主的にアミューズメントのスタッフのバイトを見つけて来て、採用されました。
でもそちらは最初のよりも短くて、2日しか続きませんでした。
接客の仕事であったことが、よりハードルが高かったのだろうと私は思っています。
だけどそこでも「仕事の説明を聞いても何を言っているのかわからない」としきりに文句を言っていました。
息子は言語に関して、決して劣っているわけではないと思います。
どこから引っ張って来るのか、難しい言葉を使ったり理屈をこねたりして私達を言い負かすだけの言語力はあるのです。
だけどそれは一方的な主張であり、相手がある上での会話能力、コミュニケーション能力は欠けているのでしょう。
「相手の説明が何を言っているのかわからない」というのは、私達の想像よりもっと深刻なレベルで理解できなかったのではないかと思います。
それはもしかしたら妄想という症状が強かった息子のこと、思考に歪みがあり、入ってくる言葉も歪んだ捉え方しかできないのかもしれません。
人を相手にする仕事は少なくとも無理だったと思います。
これは息子の場合という話で、統合失調症の患者さん全てがこうなるということではありません。
しかし、妄想や幻覚があってそれに捉われている場合、引き替えに疎通性の低下はあるのかもしれません。
仕事をしたくても働けない
社会性の不足
長いことひきこもりでほとんど対人関係がなく、家族とでさえまともに会話もなく、思春期を過ごしてきたのだから、はっきり言って社会性がなくても当然かもしれません。
少しずつでも練習していっていずれ何らかの仕事でもできれば、と思っていましたが、統合失調症で自分の世界にこもってしまいがちの息子にはそれもままならないことでした。
現実に沿わない自分をわかっているのか、そしてそれを認めたくないのか、今の時点では非現実な職種を挙げながら、自分に向いているのはこの仕事でありそれ以外は考えてないなどと言い出します。
薬剤師になるとか医師になるとかです。
そしていつものように、延々と私やうちの家系に対する恨みつらみを延々と言い始めるのです。
まとめ
何もせずにゴロゴロして見えても、多分、本人の中では何とかしたいという焦りはあるのでしょう。
息子は決して怠け者だったわけではないと思います。
現実離れした自己評価は、実は現実には自己評価がとても低いことの裏返しであり、病気の症状とは一概に言えないかもしれません。
でも、深い意味もないような私達の一言で過敏に反応ししつこく食い下がってくる息子は恐ろしく、意見はできませんでした。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
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