スクールカウンセラーがきっかけで息子は精神科を受診することになりました。
でもすぐに診断がついたわけではありません。
統合失調症ではないか?と疑わしい症状があっても、他にも似たような症状の病気はあるし、特に中学生という若年齢では病名もかなり慎重に付けられることを知りました。
今回の記事は初めて精神科受診することになった時のことです。
スクールカウンセラー同行で精神科を受診
スクールカウンセラーは定期的に息子と面会し、そこには比較的良い関係が構築されていった様子でした。
一方で、私達家族と息子との間には常に緊張感が漂っていました。
家族全員が常に息子の顔色を窺い、下手なことは言えない、よけいな刺激をしてはいけないと恐る恐る言葉を交わし、言ってしまえばできるだけ接触したくなかったです。
同様に、彼の方も当時からきっと私達にはわからない、家族に対する怒りやわだかまりを抱えていたのだとは思います。
だから彼にしてみれば、スクールカウンセラーが唯一の人間関係でした。
息子と関わっていく中で、心理士の立場からも違和感を覚える言動があったのかもしれないし、あるいはそういうマニュアルがあるのかもしれませんが、精神科を一度受診させてみてはどうかと提案されました。
私は、息子の意味不明なノートの内容などが不安でカウンセラーに話したこともあります。
私達に見せたくらいなので、その存在はご存知だったのでしょう。
ただ、少なくとも意思疎通は可能である、会話が成り立つこと、なぜこんなことを考えたのかについての本人なりの理由がある、などを挙げて、必ずしも病的な妄想とは言えないとカウンセラーは言いました。
一方で、医療機関を受診し医師の診察を受けてみることは有意義であることも説明されました。
本人は抵抗することなく受診の勧めに応じる
精神科受診について、本人がどのように考えたのかはわかりません。
家族からはその話を本人に勧める自信などとてもなかったですが、本人はスクールカウンセラーからすでに提案されていたようです。
それはカウンセラーとの人間関係の中で話し合われていて、本人は承知しており、私とカウンセラーと担任が同行で精神病院を初めて受診しました。
本来は家族が連れて行くのでしょうが、もしかしたらこれが息子の受診の条件だったのかもしれません。
少なくとも、ピリピリしてまともに会話もできない家族が、長くひきこもりの息子を精神科まで連れ出すことはかなりハードルの高いことだと思います。
精神科での診断名は「うつ状態」
精神科では、私にも聞き取りがありましたが、医師と本人との直接の面談がメインでした。
他の科のように、通訳係の親が隣にぴったり付いて、本人の説明不足を保護者が解説するわけではありません。
しかし私は不安でした。
一人で診察を受けてどんなことを喋るだろうか、私達のことをどんなふうに言うのだろうか、おかしな話をされたら困るという気持ちもありました。
当時の自分を振り返れば、私の支配的な面や人に悪く思われたくない勝手な欲求なども客観的に見えてきます。
その日、息子はうつ状態という曖昧な診断が付きました。
不安が強いならそれを鎮める薬もあると提案されましたが、本人が希望しませんでした。
私から見れば、何ともあっけなく精神科受診は終わり、ここまで来ればいっそ治療できるのではという期待もあって、それも見事に散ってしまったのです。
統合失調症の確定診断は慎重にされる
統合失調症の診断基準には二つのスケールがあります。
- WHO(世界保健機関)国際疾病分類「ICD-10」
- 米国精神医学会「DSM-5」
この2つが基準になります。
DSM-5は、過去にDSM-IVだったものであり改訂されてDSM-5になっています。
↓は日本精神神経学会のページからの引用で、IVという古い表現のままですが主にDSMが診断に用いられていることが書かれてあります。
診断基準として国際的に認められているものは、米国精神医学会によるDSM-Ⅳである(表1)。以下に、各症状の説明を記す。
表1:統合失調症の診断基準
A 特徴的症状:以下のうち2つ(またはそれ以上)、各々は1カ月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在。
(1) 妄想
(2) 幻覚
(3) 解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
(4) ひどく解体したまたは緊張病性の行動
(5) 陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如
注: 妄想が奇異なものであったり、幻聴がその者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに会話しているものである時には、基準Aの症状1つを満たすだけでよい。B 社会的または職業的機能の低下:障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している (または小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。 C 病状の持続が6カ月以上 D うつ病、躁病の合併がない E 物質乱用、身体疾患によって生じたものではない F 自閉性障害の既往があった場合には、幻覚や妄想が1カ月以上(治療した場合には短くてもよい)続いた場合のみ、診断する。 ※:C~Fは要点のみ記載。
出典元:公益社団法人 日本精神神経学会 https://www.jspn.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=59
診断基準の参考サイト
精神科医師がこのようなチェックリストを診察の時に本人を前にして使うわけではないでしょうから、現実的にはこれを基準に問診や会話から診断されるのでしょう。
普通の科であれば決められた検査の数値などで目に見えてはっきりしますが、精神病は医師の観察にかかっています。
息子の様子は単にうつ状態だけかと疑問でしたが、精神科は初診でいきなり確定診断が付くことはなさそうです。
特に若年齢の場合、思春期独特の不安定な精神状態や一時的に偏った思考があったり、他の病気の可能性があったりと、いろいろなことが考えられるので、確定診断はかなり慎重になされるのだそうです。
ですので中学生である彼には、現状に合う当たり障りのない病名が仮につけられたのでしょう。
統合失調症の確定診断は中学卒業後につけられた
息子の場合、統合失調症とはっきり診断されたのは中学を卒業してからです。
卒業すれば当然、学校のスクールカウンセラーとも縁が切れることになります。
ですがその後もカウンセリングを受けられるように、医療機関(精神科)の心理士に繋いで下さいました。
その時は、親身な先生だと単純にありがたく思いました。
今思えば、プロの目からもいずれ本格的に医療を必要とする時が来ることが想定できたのかもしれません。
その時に備え、心理士との面識を作り、何かの形で医療と繋がりを作っておく方が本人がスムーズに治療に繋がると考えたのではないでしょうか。
一度だけでも精神科を受診させたことは、精神科に初診の情報を残しておくという意味で大事だったのかもしれません。
案の定、本人は自分に必要がないと精神科通院は拒否しました。
しかし彼は、心理士という職種には一目置いていた様子で、心理士と話すという形であれば納得して、たまに病院に行きました。
そして、精神症状が明らかになってきた時に、細々と医療に繋がっていたおかげでそこに入院することになり、これまでの経過から統合失調症という病名が付きました。
まとめ
統合失調症ではないのかと思う反面、その診断をされることが不安でもありました。
その診断名を聞いた時、ああやっぱりそうかと納得してすっきりした気持ちになり、同時に大きな絶望がありました。
いずれ時期がくれば殻を破って飛び立つかもしれない、思春期のデリケートな時期を過ぎれば、という期待はもう持てないことを突き付けられたような気がしました。
これからどうすればよいのか、どうなるのかなど全く想像もつきませんでした。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
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